8/29

 誰も助けてくれないと思っていた。自分自身でさえ私のことどうでも出来ないと思っていた。だから、自殺しようと決めていた。その2日前に今の恋人に告白された。

 恋愛は全てを救ってはくれないと思う。それでも恋人は私を救ってくれた。どうにもならないことばかりだったけれど生きていて良かったと思う。

8/11

 首を吊った。落ちていく感覚が気持ちよくって怖かった。

 結局、入浴を終えて部屋に戻ってきた同棲中の恋人に発見され未遂に終わった。恋人は怒り私の頬を叩いた。私は泣いていた。

 私が死のうとしたことは恋人と私しか知らなくって、明日も明後日もその先も私たち以外の誰にも知られないまま生きていくのだろう。

7/14

 船に乗った。ゆっくりと街の明かりが遠ざかっていく。

 小さくなっていくネオンはキラキラ輝いていて別の世界のようだ。あの光の中にたくさんの人がいて、私も数時間前まではそこにいて、そこが汚くて醜い場所だったことを知っているはずだった。なのに、その美しさに見とれてしまう。 

 しばらくすると街の明かりは遠くになっていき、辺りは暗くなった。その中で海は特別暗かった。でも、怖くはない。海は全てを受け入れてくれそうだった。この中に吸い込まれていけるのならどれほど素敵なことなのだろう。

 海の中で何かが光り始めた。夜光虫だ。昔の理科の授業で先生が話していたのを思い出した。青白い光が綺麗でまるで生き物ではないみたいで羨ましかった。

 私もその虫になりたいと思った。

 

7/7

 どこにも私がいない。誰の中にも私は存在しなくて私の中でさえ私は存在しないように思える。たしかに私という物質はここにあるのにまるで透明のよう。

 痛みが欲しい。たくさん私を傷つけて私がここにいることをわかりたい。私はちゃんとここにいるよって、誰も知らなくても私は私を知っているよって。そうやって私が私の救いになりたい。

6/5

 ひとりが怖い。
 百錠単位で薬を飲むといつもそう思う。誰か側にいて欲しい。私をひとりにしないで。自分の身体がどこまで壊れていくのかわからない恐怖をひとりで受け止めたくない。
 誰にも認識されないことが恐ろしい。私の苦しみや喜びを誰にも知られないこと。誰にも知られなければ、それは存在しないことと同じだと思う。なのに、いつも私はひとりだ。

5/27

 人から心配されることが少ない20年間だった。助けを求めても「貴方は真面目だから」「しっかりしているから」「賢いから」と、様々な理由をつけて誰も私を助けてくれなかった。「もっと酷い状態の人もいるから、貴方は大丈夫だよ」と言われたこともある。もし私が自分の弱さに身を任せて堕ちていっていれば、誰か私のことを心配してくれた?

5/23

 何かを作ることが好きだった。

  そうしている間だけ、私は世界に対して能動的になれる。私の存在を世界に刻めているような気がする。絵を描くこと、立体作品を作ること、文を書くこと。方法は何でも良かった。

 それらで誰かに評価されたかった。誰かに私の存在を気付いて欲しかった。だから、何かを作ってはコンクールに応募してきた。でも、駄目だった。誰にも見てもらえなかった。

  私はいつまでも世界に対して受動的だった。