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 船に乗った。ゆっくりと街の明かりが遠ざかっていく。

 小さくなっていくネオンはキラキラ輝いていて別の世界のようだ。あの光の中にたくさんの人がいて、私も数時間前まではそこにいて、そこが汚くて醜い場所だったことを知っているはずだった。なのに、その美しさに見とれてしまう。 

 しばらくすると街の明かりは遠くになっていき、辺りは暗くなった。その中で海は特別暗かった。でも、怖くはない。海は全てを受け入れてくれそうだった。この中に吸い込まれていけるのならどれほど素敵なことなのだろう。

 海の中で何かが光り始めた。夜光虫だ。昔の理科の授業で先生が話していたのを思い出した。青白い光が綺麗でまるで生き物ではないみたいで羨ましかった。

 私もその虫になりたいと思った。